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TOP > WEBマガジン『KZ-plus』 > インタビュー「えーあー症候群・伝わるプレゼンの敵(5)」
▼高津和彦インタビュー
取材・構成/今城裕実
撮影/北尾浩幸
今城: | なるほど。 まだ他に、「えーあー症候群」に有効な方法はありますか? |
高津: |
はい。 「えーあー症候群」は、定まらない言葉と、定まらない心とがぶつかり合うことが主な原因と言いましたよね。 次は、定まらない心についてお話しましょう。 |
今城: | 無難に済ませたい気持ちや焦りが、心を不安定にして、「定まらない言葉」とぶつかり合うんでしたよね。 |
高津: |
そうそう。 心が定まっていると「えー・あー」が出ない例として、こんなおもしろいことがありました。 この前、なでしこJAPANが優勝しましたよね?(インタビュー時2011年7月) キャプテンの澤選手のインタビュー、見ましたか? 試合直後のインタビューでは、澤選手は歯切れよく勢いよく答えているのに、帰国してからの選手代表挨拶では「えー・あー」が出てるんです。 憶測ですが、インタビュー直後は感情のほとばしるままに話しているのに対して、選手代表挨拶では言うべきことや言葉遣いに縛られていたんでしょう。 もしかしたら、原稿があったのかもしれませんね。 |
今城: |
そういえば、スポーツ選手のインタビューで「えー・あー」はあまり聞きませんね。 記者がややこしい質問をしない限りは。 感情が高まっていると、言葉がスラスラ出るということでしょうか? |
高津: |
夢中で話す時には、「えー・あー」は出ないでしょう? 本当に感動したり、悲しかったり、怒ったりして話す時なんかね。 例えば、社長が社員に「君らは一体日頃何をやってるんだ!そんな調子だから、今月の売上が…」と言う時に「えー・あー」は入らない。 逆に、社員が社長に「今月は円高で5割減です!想定外です!」とは言えない。 「えー、売上はですね、あー約5割の減少傾向で、えー原因といたしましては、あー」となってしまうのは、心が定まっていないせいです。 「どう言えばいいんだろう…」と心が弱くなっているから、言葉をなかなか決められなくて、「えーあー症候群」になってしまう。 嬉しい時、感情のままに話すのに「えー、嬉しくて、あー、思わず笑顔に」なんて人はいませんよ。 |
今城: | ほんとですね(笑) このスラスラが、ビジネスシーンのスピーチでできればいいのに! |
高津: |
そこです。 ビジネスの場面では感情のままに話すわけにはいきませんが、こういう強い思いは「えーあー症候群」克服のためには絶対に必要なんです。 次の言葉を考えようとして「えー・あー」が入るのは、脳をパソコンに例えるとメモリ不足になるからだ、と言いました。一般的に、理論的なことは言語中枢のある左脳が司っていると言われていますよね。 だから、言葉を考えてメモリ不足になっているのは左脳ということ。 そして、感情は右脳が担当していると言われています。左脳だけでは大変でも、右脳と一緒に働かせれば、反応速度はグッと速くなるはずですよ。 パソコンのCドライブ・Dドライブのように、どちらか一方だけを過剰に使うより、両方使う方が負担が軽いみたいなものでしょうか。 |
今城: |
なるほど、Cドライブ・Dドライブですか。 ですが、右脳が、左脳の働きを補えるものでしょうか? |
高津: |
右脳、つまり感情は言葉を生み出すエネルギー源であり、左脳の仕事のブースター役。 これがバランスよく働けば、澤選手のインタビューのように、スラスラと言葉が出るわけです。 左脳だけを働かせると、「えーあー症候群」になりやすい。これは、まちがいありませんよ。 |
今城: | では、右脳も目いっぱい働かせるといいんですね! |
高津: |
いえいえ、右脳ばっかり働くと今度は支離滅裂になりますよ(笑) 極端な話、感情だけなら「叫び声」になるんですから。 ちゃんと両方を働かせないと。 |
今城: | なかなか難しいものですね。 |
高津: |
そうですか? 話す時に、話したいことをハッキリ意識して、強く心に思うのが大事だという、ただそれだけのことですよ。 こういう話をするぞ、ちゃんと伝えるぞ、っていう気持ち。信念、と言い換えてもいいかな。 |
今城: |
それなら、わかります。できそうな気がしま…いえ、今度から絶対やります! で、いいんですね? |
高津: 今城: |
そうです、その通り!
本当ですね。 |
高津: |
「えーあー症候群」の人が周りにもたくさんいるからって、安心してちゃダメです。 反対に、治してしまえば話し方で大勢の中から抜きん出ることができますよ。 |
今城: |
今日は、少しお話をうかがっただけでも随分「えーあー症候群」を治すポイントがわかりました。 実践的なトレーニングが重要なことも、改めて認識しました。 |
高津: |
このWebマガジンを読んだ人は、明日から意識して「えーあー症候群」を治していって下さい。 日本から「えーあー症候群」の患者が少しでも減るように、僕もベストスピーカーで頑張ります! |
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